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木質建築学について

 少子高齢化社会が到来しつつある現在、高齢者の大部分は、木造住宅で暮らしていると言っても過言ではない。とりわけ島根県は、国内でも有数の高齢者比率と木造住宅比率のいずれも高い地域である。とすれば、地域医療・地域介護の面からも、バリアフリーも含めた今後の木造住宅のあり方を、「エコロジー」や「省エネ」といったキーワードと共に再検証する必要が急務である。 
 地域への密着を目指す島根大学としては、地域社会に対して学術的な視点からより豊かな暮らしを提案する責務があると考えるが、『木質建築学(木材や木質材料を構造材として用いた建築構造物に関する学問)』はその一翼を担うと考えている。
 近年、木造建築を見直す動きが大きくなってきている。それは、地球温暖化防止や循環型社会形成に資する木材を、もっと住宅や建築物に活用しようとする社会的背景を反映したものである。例えば、国土交通省では、木造住宅の振興施策を打ち出しており、多様な補助・促進事業が実施されてきている(木のまち・木のいえ推進フォーラム、木造住宅等の施行能力向上・継承事業など)。 
 そうした中、島根県は国内でも有数の森林資源に恵まれた土地であり、地域社会への貢献という島根大学に課せられたミッションを遂行する上でも、木質建築学の実質化には大きな意義があると考えられる。もちろん木造建築をさらに利用していくためには、課題も多い。特に以下の三点は大きな課題である。

1.木造建築の維持管理

 木造建築は相続と共に老朽化したまま放置されることが多く、中心市街地の衰退、あるいは中山間地域の過疎の問題と併せて空き家問題が深刻化している。一方で、木造建築には、高齢者が住むことが多く、ユニバーサルの視点から改造が必要な場合も少なくない。また木造住宅の中には遺産的価値があるものが少なくないが、そのことが認識されず維持管理にも支障が多い。

2.木造建築の安全性

 木造建築は、防災の観点からみると、脆弱な面があることは否めない。まず木材は火災に弱いという特徴がある。一方で耐震性能もRCなどに比べると劣ることが多い。特に老朽化した木造建築に関しては、早急な耐震化が求められる。また空きや問題と関連しているが、防犯の面からも対策が必要である。

3.木造建築の住環境

 老朽化した木造住宅の場合、キッチンやトイレ、冷暖房設備など、現在のライフスタイルに適していない部分も少なくない。木造住宅の場合、断熱・気密性は劣るが、蓄熱・遮熱・吸湿・通風などでは木造住宅の良さもある。今後、より良い住環境を模索していく必要性に迫られているといってよい。またリサイクルの観点からも木造住宅は環境にやさしく、今後の利活用に向けてさまざまな可能性が秘められている。
 以上の課題をふまえ、木質建築学に関する建築と材料分野の融合的な分野を立ち上げ、以下の7部門にわけて教育・研究を推進する。

  1. 木造建築を生かしたまちづくり:都市計画部門
  2. 木造建築の遺産的価値の再発見:建築史部門
  3. 木造建築の社会的プレゼンテーション:建築構法部門
  4. 木造建築の安全性:建築構造部門
  5. 木造建築の住みやすさ:住環境部門
  6. 木造建築の材料開発:材料部門
  7. 木造建築の教育プログラムの充実:建築士育成プログラム